肉用牛のAI 超音波肉質診断システムを活用した飼養管理技術の向上及び効率化

実証の背景・概要

(1)背景

○現状

相馬地域は県内有数の肉用牛産地であったが、東日本大震災に伴う被害や原子力災害による避難等で肥育牛飼養頭数が61%減少した。また、原子力災害による風評により、福島県産の牛枝肉価格は全国平均よりも10%程度安価で推移しており、肥育農家の経営に影響を及ぼしている。

○改善方向

枝肉価格の向上とブランド力の回復を図るため、AI超音波肉質診断技術を活用した飼養管理技術の見直しと出荷時期及び出荷先の選定を行い、品質の安定した肉用牛出荷体制を確立する。

(2)実証の概要

○導入技術、戸数及び頭数

導入技術:AI超音波肉質診断技術

戸数及び頭数:実証農家1戸80頭

○技術の概要

出荷月齢の短縮と肉質の安定化を図るため、若齢期から生育ステージ毎にAI超音波肉質診断を実施し、早期に出荷時期の判断を行うとともに、血液検査データとの関連性を明らかにすることで、育成期の給餌方法等の飼養管理改善を行う。

実証の成果

(1)成果

○AI超音波肉質診断により出荷時期が適正化され、枝肉の上物率が向上した。(表1)

○令和6年度は生産コストの上昇に加え、枝肉相場が低調に推移したものの、出荷時期の早期判断が可能になったことで肥育期間が短縮され、所得を確保することができた。(表1)

〇超音波肉質診断の結果、肥育期間の短縮が可能な個体があることについて農家の理解がすすみ、自ら配合飼料のTDN含量を調整する等、飼養管理の改善が図られた(表2)

(2)課題

○肉質診断データを飼養管理改善に活用するため、令和5年度から超音波肉質診断と併せて実施している生育ステージ毎の血液検査について引き続きデータを収集し、分析を行う必要がある。

(3)産地への波及効果

○出荷時期の見極めや飼養管理の見直し・改善が図られることにより、品質の安定した肉用牛の出荷が期待される。

(4)次年度の対応

○育成ステージ毎の超音波肉質診断のデータを蓄積するとともに、ビタミンA及びコレステロール等の血液検査データとの関連性の分析及び飼養管理への応用方法について検討する。

実証担当農家・産地より

○ 出荷適期の肉質が推定できることにより、セリ価格が期待できる市場や枝肉共励会への出荷の判断の一助 となっている。また、育成ステージ毎の調査により、仕上がり の早い牛について は早期 出荷を判断すること が でき 、牛舎回転率の向上につながって いるため、今後 も本技術を活用して いきたい。