肉用牛のAI超音波肉質診断システムを活用した 飼養管理技術の向上及び効率化

令和7年度 相双農林事務所農業振興普及部

実証の背景・概要

○AI超音波肉質診断システムとは、「福島イノベーション・コースト構想」の下、帯広畜産大学や関係機関と連携して開発されたシステムである。
飼育中の牛生体の超音波映像と、と畜後の枝肉を枝肉画像撮影装置により撮影した画像データを組み合わせ、AIに学習させることにより、成育途中の肥育牛の超音波映像から将来の枝肉成績を推定する。
本システムの活用により、早期出荷判断による飼料費の削減や畜舎回転率の向上、有利な出荷先選定による枝肉単価及び上物率向上による「福島牛」のブランド力向上が期待できる。

 

想定する普及対象

○地 域:県内外全地域
○生産者:枝肉の品質向上を目指す肥育農家、出荷先の選定にあたり客観的な判断材料が必要な肥育農家

 

実証の概要

(1)背景・目的
○相馬地域は県内有数の肉用牛産地であったが、東日本大震災に伴う被害や原子力災害による避難等で肥育牛飼養頭数が約60%減少した。また、原子力災害による風評により、福島県産の
牛枝肉価格は全国平均よりも10%程度安価で推移しており、肥育農家の経営に影響を及ぼしている。
○AI超音波肉質診断システムを導入することで、飼育効率や畜舎回転率、枝肉単価の向上により効率的かつ高品質な肉用牛生産体制の確立が期待できる。

(2)方法
○2ヶ月に1回(年間6回)のAI超音波肉質診断調査を実施。12ヶ月齢以上の牛を2ヶ月毎に超音波肉質診断映像、体側(胸幅・胸囲・腹囲)を測定した。併せて、若齢~肥育中期に血液検査を実施し、ビタミンAやコレステロール値を測定した。

(3)成果
○出荷時期の早期判断及び適正化が可能となったことで、肥育期
間が短縮され、出荷された全ての牛が上物となった。


4)産地への波及効果
○飯舘村畜産農家7名を対象に勉強会を開催した結果、2名の農家より調査実施の要望があり、他地域への技術の普及が図られている。

 

実証担当農家・産地からの評価

○出荷適期の肉質が推定できることにより、セリ価格が期待できる市場や枝肉共励会への出荷の判断の一助となっている。また、育成ステージ毎の調査により、仕上がりの早い牛については早期出荷を判断することができ、牛舎回転率の向上につながっているため、今後も本技術を活用する意向である。

 

前提条件

○想定の経営
労働力 1名(臨時雇用1名)
飼養頭数 120頭
○飼料給与
◆肥育前期(10~12ヶ月)
・粗飼料 3~4㎏
・配合飼料 6~9㎏
・大豆粕 0.4㎏
◆肥育中期(13~22ヶ月)
・粗飼料 2~3㎏
・配合飼料 9~10㎏
・大豆粕 0.2~0.4㎏
◆肥育後期(23ヶ月~)
・粗飼料 1~2㎏
・配合飼料 10㎏

 

主な導入コスト

①作型適応苗の自家育苗に必要な資材例

経営モデル

○経営モデルの補足説明

技術導入のメリット

○出荷先での高値取引や早期出荷による飼料費削減により、所得向上が期待できる。
○早期からAI肉質診断を用いて牛の状態を把握、飼養管理を見直しすることで、枝肉の
上物率の向上が期待できる。
○牛の体型に加えて、超音波映像、肉質診断結果から、客観的な牛の状態を把握する
ことができる。

技術導入の注意点等

○正確なAI評価を行うためには、適切な位置での超音波映像の取得が必要であり、研修の参加や実務経験によるAI超音波機器の操作技術の取得が重要である。
○経営向上のためには、AI超音波肉質診断や飼養管理状況、血液検査、体側等の多角的情報から肥育牛の情報を見える化し、経営の判断材料を提示することが重要である。