水稲育苗ハウスを利用したぶどう栽培の実証
実証の背景・概要
(1)背景
○現状
寒冷地である南会津地方においては、凍害のリスクがあることや、果実の成熟に必要な温度が不足しやすいことから、他の地方と比べて果樹の栽培面積が少ない。
○改善方向
消費者ニーズの高い大粒系ぶどうを既存の水稲育苗ハウスに導入することで、施設の有効活用により農業者の所得確保を図る。
(2)実証の概要
○導入機材及び面積
導入機材:果樹棚、赤色防虫ネット、自動かん水装置(スマジョロ)
導入面積:1.9a(6.3m.30mの水稲育苗ハウス1棟)
導入品種:「シャインマスカット」7本(4年生5本、3年生2本)「クイーンニーナ」1本(3年生)
○技術の概要
樹形は、オールバック1本主枝とし、短梢栽培法により栽培する(図1)。剪定が単純で、新規栽培者が取組みやすい短梢栽培法を採用する。

実証の成果
(1)成果
○樹冠面積が15%から約30%となり、単年では十分に拡大した。また、収量は387.3kg/10aとなり樹冠面積に対応した十分な量を確保することができた
※目標収量:1.2t/10a
○果房重は「シャインマスカット」で647.8g、「クイーンニーナ」で561.7gとなり、十分な大きさを確保することができた(表1、写真1、写真2)。


(2)課題
○密植であるため、新梢管理に要する時間が長くなり、慣行栽培(福島県農業経営計画策定指標より)と比較して労働時間が長くなった(図2)。今後は植栽密度の見直しが必要である。

図2 10aあたりの労働時間(成園化率30%)
○収穫適期が判然としなかったため、収穫時期の見直しが必要である。
○骨格パイプが高温となり、主枝延長枝の一部が枯死したため、骨格パイプの被覆が必要である。また、ハウス内が高温となり、「クイーンニーナ」の着色が悪かった(写真3)ため、高温対策の実施と導入品種の見直しを検討する必要がある。

(3)産地への波及効果
○ぶどう栽培に興味を示す経営体が出てきたため、導入戸数・面積の増加が期待できる。
○成園化し、着果量が増加することで所得の確保が期待できる。
(4)今後の対応
○間伐により植栽密度を見直し、自動かん水と短梢栽培による省力効果を再評価する。
○満開後日数別の果実品質を調査し、収穫適期の目安を明らかにする。
○主枝延長枝と接する骨格パイプを被覆する。また、「クイーンニーナ」については、適切な着房数、着粒数とし、カサ及び袋をかけずに栽培を行う。
実証担当農家・産地より
○房作りの技術習得が必要と感じたが、想像していたより簡単にぶどうが栽培できた。(実証ほ担当農家より)。