ミスト冷房で栽培環境と作業環境を改善 ~データ活用による自動化も見据えた、進化するスマート農業~|会津美里町で、きゅうり・水稲栽培に取り組む、大越さんにインタビュー
会津美里町で、きゅうり35aと水稲13haを栽培する大越さん。主力となるきゅうり栽培では、ハウスにミスト冷房設備を導入し、栽培環境と作業環境の改善に取り組んでいます。
「機械に任せられる作業は任せて、その分、人にしかできない仕事に時間を使いたいと思っています。」
そう語る大越さんに、ミスト冷房設備を導入したきっかけや導入効果、自動かん水設備との併用、そして今後目指す農業について伺いました。

会津美里町で、きゅうり・水稲栽培に取り組む大越さん
スマート農業導入の背景
会津美里町は、昼夜の寒暖差が大きく、夏場は湿度が高い地域です。一方で台風の影響は比較的受けにくく、きゅうり栽培に適した環境でもあります。
大越さんは2010年に就農し、今年で17年目。きゅうり35a、水稲13haを経営し、複数のハウスできゅうりを栽培しています。収穫したきゅうりはJAへ出荷するほか、規格外品や小ぶりなきゅうりは地域のスーパーでも販売しています。
夏場の強い日差しや高温は、きゅうりの生育にも、ハウス内での作業にも大きな負担となります。そこで大越さんは、ハウスにミスト冷房設備を導入しました。井戸水を活用した自動かん水設備とあわせて、生育状況に合わせたきめ細かな栽培管理を行っています。

きゅうり・水稲の圃場(一部)
ミスト冷房で栽培環境と作業環境を改善
ミスト冷房設備は、ハウス内に細かな霧を噴射することで、夏場のハウス内の温度上昇を抑える設備です。導入のきっかけは、農業普及所からの依頼による試験運用でした。実際に使ってみて効果を実感したことから、その後、自ら設備を増設しました。
「収量そのものは大きくは変わっていないんですが、初期の生育が出来上がるまでの葉焼け被害はめちゃくちゃ減りました。曲がり果も減ったように感じます。」
興味深いのは、データ上の気温は目に見えて下がっているわけではないという点です。それでも、体感としてはかなり涼しく感じられ、作業のしやすさは大きく変わったといいます。
「真夏の一番暑い時間帯にハウスへ入らなくて済むようになりました。今まで手作業でやっていた葉面散布も、ミストがやってくれるので。」
一方で、ミストを使用しすぎると湿度が高まり病気が発生しやすくなるため、その日の気象条件や生育状況に応じて適切に運用しています。機械に頼りきるのではなく、天候や生育を見ながら使いこなす。そこに大越さんの経験が活きています。

ミスト冷房設備
自動かん水で生まれた「時間」という価値
ミスト冷房とあわせて、大越さんの栽培を支えているのが自動かん水設備です。導入したのは約8~9年前。井戸から汲み上げた水をタンクに貯め、設定した時間ごとに各ハウスへ送る仕組みで、水やりのためだけにハウスへ入る必要がありません。
「自動かん水にすることで、かん水にかけていた時間をほかの作業に充てられる。それがメリットの一つで、もう一つは細かい管理ができること。一回でドカンと水を与えるのではなく、こまめにかん水できるのがいいなと思いました。」
「以前は朝10分、お昼10分とやっていたところを、今は日中3分ずつを5~6回など、細かく分けられます。一番暑い時間帯にわざわざハウスに行って水をいじる作業をしなくていいのが一番大きいですね。昼休みも取れるようになりました。」
その結果、収量のアップダウンが減り、ある程度一定した収量を確保できるようになりました。また、体調が優れない日や忙しい日でも、設定どおりにかん水されるため、水やり忘れがなくなり、安定した栽培管理につながっています。
一方で、大越さんは、設備だけに頼るのではなく、毎日ハウスを巡回し、土の状態や葉の様子、天気を見ながら水量を調整しています。
「朝行ったときに葉が結露で濡れていたら、通路へのかん水は控えようかな、とか。夕方にマルチの中を見て湿り気が減っていたら少し増やそうかな、くらいの調整は毎日やっています。最終的には、自分の目で見て判断しています。」自動化によって生まれた時間は、きゅうりの管理や手入れなど、人の判断や経験が求められる作業に充てられるようになりました。

自動かん水設備

かん水の様子
目指すのは、データを活用した「誰でも管理できる農業」
現在も、かん水とミスト冷房の切り替えは手動で行っています。朝はかん水し、暑くなる昼前にはミストへ切り替える。毎日欠かせないこの作業が、今一番手間のかかる部分だといいます。
ハウス内には気温や湿度のデータを取得する装置も設置しており、今後は、こうしたデータを活用して、かん水やミストを自動で切り替えられる仕組みづくりを目指しています。
「今は自分だから管理できていますが、誰でも同じように管理できる仕組みにしたいですね。」
さらにその先には、収穫や消毒の自動化への期待もあります。一方で、葉かきや整枝といった手入れは「自分で考えながらいじれるのが好きなので、そこは自分でやりたい」と話します。
「楽できるということは、ほかの作業の時間も、自分の時間も作れるということ。機械に任せられるところは任せて、人にしかできない作業に集中したいんです。」
将来的には、誰でも同じ品質で栽培管理ができる環境づくりを目指すとともに、人にしかできない作業へより多くの時間を使える農業を実現したいと考えています。

スマート農業の導入を検討する方へ
最後に、これからスマート農業を導入する農業者へのアドバイスを伺いました。
「目的をはっきりさせて、どこまでやるかを最初に決めてしまうことですね。」
大越さんの自動かん水は、水質の良い井戸水を使いたいという思いから、井戸を掘るところから始まりました。井戸を掘れば水中ポンプが必要になり、ポンプには電気が必要になる。必要に応じて設備を付け足しながら進めた結果、システム同士の連携がうまくいかなかったり、コストがかさんだりと、苦労した経験があります。
「後付けはお金がかかるし、技術はどんどん発展しているので、古い技術との連携も難しい。最初にちょっとお金がかかってもいいから、メーカーさんと話して妥協しないで作った方がいいと僕は思いました。中途半端は良くないですね。」
また、機械の操作に不安がある方へは、こんな言葉も。
「電卓と一緒で、毎日使っているうちに指がボタンの位置を覚えるんです。最初は僕もすごく苦労しましたが、やってみるとそんなに大変ではない。むしろメリットの方が大きいと感じました。」
導入する技術だけでなく、「どのような農業を目指すのか」という目的を明確にすることが、スマート農業を効果的に活用するための重要なポイントだと話していました。
「農家、楽しいですよ。自分で自由にできるのが一番いい。失敗も成功も自分の責任、という感じでやっていくのがいいのかなって。」
ミスト冷房は、栽培環境と作業環境を改善するだけでなく、データ活用による自動化への足がかりとして、大越さんのきゅうり栽培を支えています。
