キク類の計画的安定出荷技術の実証

実証の背景・概要

(1) 背 景
○ 現 状
キク類は、需要期である8月盆や9月彼岸の安定出荷が求められているが、露地栽培では開花時 期が安定せず、需要期を外してしまうことがある。また、主要病害であるキク白さび病が発生する と品質及び単価、出荷量の低下問題となる。
○改善方向
需要期である8月盆の安定出荷のため、電照栽培による開花調節 技術の実証を行う。
なお、電源が確保できないほ場条件を想定して太陽光移動蓄電装置を用いて消費電力の少ない電球型LEDランプを用いる。
また、キク白さび病の防除のため、挿し芽の際に温湯浸漬処理を 実施し、白さび病の防除効果について実証する。

(2)実証の概要
○ 導入機材及び面積
・電照栽培:電源 固定電源、太陽光蓄電装置 面積各0.5a 光源は電球型LEDランプ電球色8w使用。
・温湯浸漬処理:温湯消毒機(タイガーカワシマYS-200L)、面積2.7a
○ 技術の概要
・電照栽培:夜間電照を行うことで花芽分化を抑制し 開花時期を調節する。
固定電源は23~5時半の6時間、太陽光電源は23時半~4時の4.5時間。(供試品種(花色) :精こまき(黄) 、精しらたき(白))
・温湯浸漬処理:挿し芽時にあらかじめ予備加温しておいた挿し穂を45℃の温湯 に1分間浸漬処理することで挿し穂の白さび病の密度を低下させる。8月咲き6品種、9月咲き4品種を供試。

図1 太陽光蓄電装置
図2 温湯浸漬処理の実施

 

実証の成果

(1)成 果
○ 電照栽培は、春先の高温の影響と発蕾時期の高温による開花抑制を危惧し消灯時期を前に分散させたことから、開花が前進し8月上旬の出荷率が74%と目標の100%を下回った。
また、太陽光蓄電装置が計10日程稼働せず固定電源より開花がやや前進したが、概ね7月5半旬~8月2半旬の8月盆需要期に出荷された。
○ 温湯浸漬処理は育苗中、白さび病に特に弱い1品種のみ0.2%発生したが他の9品種は発生せず効果はあると考えられた。

(2)課 題
○ 電照栽培は、太陽光電源は稼働条件の精査が必要である。
○ 白さび病は、親株からの持ち越しによる感染リスクが高い。

(3)産地への波及効果
○ 電照栽培の導入により需要期の安定出荷が実現する。
○ 農薬の使用によらず、温湯浸漬処理によって育苗期間中の白さび病の発生を軽減させることで、安定出荷が実現する。

(4)今後の対応
○ 電照栽培は、太陽光電源の稼働条件を調査する。
○ 親株から採ほする苗全体に対して温湯浸漬処理した際の労力等について調査する

実証担当農家・産地より

○ 電照栽培は需要期出荷に有効であり、太陽光蓄電装置も安定稼働の課題はあるが有用性は期待できる。
○ 温湯浸漬処理は省力、防除効果が実証されれば共同利用等、技術の波及が期待できる。