タマネギの直播栽培による省力化(直播技術の確立)

実証の背景・概要

(1)背 景
○ 現 状
タマネギは震災後の平成27年秋から双葉郡で作付けが開始し、令和3年度作付けでは、21.1haまで拡大し、南相馬市と併せて「相双」の新規指定産地の指定を受けた。しかし、慢性的な人手不足や通い農業が多いなどの課題が多く、面積の拡大に結び付いていない。
○改善方向
育苗の省力化、播種・定植作業の分散化が図られる直播栽培技術を確立させ、面積の拡大を図る。

(2)実証の概要
○ 導入機材及び面積
・直播機一式セット:整形ロータリ(クボタ)
・播種機(アグリテクノ矢崎)
・フロントソワー(ジョーニシ)
・除草機(キューホー)
実証ほ面積:令和5年播種26.6a、令和6年播種30a
○ 技術の概要
直播栽培の導入で、通常2カ月かかる育苗作業と定植作業の時間と労力を削減することが可能となる。
移植栽培と直播栽培で作型ごとに作業時期をずらすことができ、栽培面積の増加も見込まれる。

図1 直播作業の様子

 

実証の成果

(1)成 果
・直播機の導入により、直播作業が10aあたり約1時間(30aあたり3時間)で終わり、育苗・定植作業に比べ、10aあたり8時間(30a
で25時間)、67%削減された。
・夏期に湛水を実施した場合、雑草の発生を抑えることができる。
・発芽率も年々向上してきており、技術の定着が見られる。

(2)課 題
・移植栽培と比較して、在ほ期間が長いため、雑草対策が課題である。
・安定した発芽率を確保するために、ほ場選定や排水対策の徹底、天候に応じた播種時期の選定が課題である。

(3)産地への波及効果
・指導会での周知によって、直播技術は生産者に浸透しており、大規模生産者で導入が進んでいる。ただし令和6年の直播栽培面積は、ほ場整備により減少した。
・ほ場整備後には経営の大規模化に伴い直播技術の導入が進む見通しである。

(4)今後の対応
・初期雑草対策、病害虫対策(農薬散布指導)

実証担当農家・産地より

・生育初期の除草管理が重要。直播でも使用できる除草剤の登録拡大などを要望する。(生産者)
・播種適期の長雨により、令和6年は播種が遅れた。育苗の手間はないがその分天候に左右されやすくなっている。