なしのジョイントV字トレリス栽培の導入による早期成園化と 省力化
実証の背景・概要
(1) 背景
○ 現状:なしは成園化するまでに10年程度かかるため、生産者の高齢化が進む相馬地域のなし産地では、 積極的な改植を進められず、樹の老朽化による生産性や作業性の低下が進んでいる。そのため、 改植後の早期成園化、作業性の向上が求められている。
○改善方向:生産性の向上及び省力化な果実生産が可能なジョイントV字トレリス栽培を導入し、老木園の改 植による所得向上を図り、産地の維持・拡大につなげる。
(2)実証の概要
○ 導入技術及び面積
導入技術:ジョイントV字トレリス栽培
実証ほ面積:6a 品種:甘太・王秋(平成31年3月定植)

○ 技術の概要
ジョイントV字トレリス栽培は、密植による早期成園化が図られる。 また、樹同士をつなぎ、一文字に主枝を配置するため、作業動線が単純に なり、かつ、樹冠をV字型にすることで、樹高が低くなり、作業姿勢が改善さ れるため、省力化及び軽労化が図られる。
実証の成果
(1)成果
○定植2年目に初収穫となり、定植3年目には慣行樹形の成園並 みの収量となった(表1)。

○定植3年目には、収量1tあたりの作業時間が3,850分となり、 慣行樹形に比べて約14%削減することができた。
(2)課題
○側枝を斜立させるために樹勢が強勢となりやすく、腋花芽着生 率が低い傾向にある。果実生産は短果枝の花芽を確保し、品種 に応じた計画的な結果枝の更新が必要である
○技術の導入に当たっては、大苗の育成や確保が必要になる。(樹間1.5mの場合は2.5m以上、樹間2.0mの場合は3.0m以上)

(3)産地への波及効果
○収量向上や省力化等の導入メリットが生産者に理解されることに より、老木園の改植が進み、生産性の向上が期待される。
○作業動線の単純化や作業の軽労化が図られるため、新規栽培者 が導入しやすくなる。
(4)次年度の対応
○花芽確保に向けた摘果や施肥、新梢誘引、せん定管理の検討
○ジョイント栽培用大苗の供給体制の構築
実証担当農家・産地より
○作業動線の単純化や腕上げ作業の削減により、作業の省力化を感じられた。
○技術の導入あたっては適性品種を見極める必要がある。