肉用牛のAIによる超音波肉質診断システムを活用した飼養管理技術の向上及び効率化

実証の背景・概要

(1) 背景
○ 現状: 本県の中山間地域等の農業は肉用牛経営により支えられており、中でも和牛肥育は県内外の枝肉共励会で好成績を収めている。一方、枝肉価格は原発事故以降、風評の影響から全国平均より200~400円(kg単価)程度の安価が続いている。
○改善方向: AI超音波肉質診断は、肉用牛の肉質を生体のまま推定できる技術であり、本技術を活用して飼養管理技術の見直しや出荷時期及び出荷先の選定を行い、和牛肥育における肉質向上と所得確保を図る。

(2)実証の概要
○ 導入機材
超音波肉質診断装置(HS1600V:本多電子株式会社)
○ 技術の概要
成育中の肉用牛の超音波画像からAIが推定した肉質診断結果を基に、飼養管理の改善、出荷時期及び出荷先の選定を行い、肉質向上と所得確保を図る。


図1 超音波画像取得の様子

 

実証の成果

(1)成果
○診断結果を基に、共励会等高値取引が見込まれる市場に出荷することで、令和4年の枝肉売上高は令和2年度と比較して4,419千円、1頭売上高は149千円増加した(表1)。
○生産部会等で当事業における取組等を紹介し、横展開を図り、診断実施戸数がR3に比べ5戸増加した(表2)。

(2)課題
○肉質向上に向けた飼養管理技術の改善等を行うため超音波肉質診断を実施してきた。しかし、現段階では枝肉格付の推定を行うのみにとどまり、飼養管理の改善まで至っていない。また、今回の実証農家のように経営規模も大きく、経験が長く、独自の肥育技術を確立している農家では、給与する飼料や給与の時期、出荷月齢等が既に決まっているため、飼料や給与メニューの改善指導に入ることはなかなか難しい。
○AI肉質診断の結果は実際の枝肉成績と比べて低めにでる傾向がある。

(3)産地への波及効果
○ 診断結果を基に、好成績が見込める個体を共励会へ出品する等、出荷先や時期を決定することで、より高値で取引され売上げが向上する。また、好成績が望めない個体を早めに出荷することで、飼料費等経費の削減につながり、肥育農家の経営安定、さらには産地の維持・発展が期待される。

(4)今後の対応
○ 実証農家において、診断結果を基に共励会等高値取引が期待できる機会に好成績が見込める個体を出荷することで売上高が向上したことから、他の農家でも活用することが可能である。また、飼料が高騰する中、これらの技を活用し、好成績が望めない個体を早めに出荷することで、飼料費等の経費を抑えるのに有効であると考えられ、この技術を活用することで肥育農家の所得向上、経営安定に寄与することができる。

実証担当農家・産地より

○診断結果を基に共励会への出品牛を選定したところ、良い成績を収めることができ、生産への意欲がさらに高まった。今後も出荷判断の参考にできるように診断精度を高めていってほしい。